【扶養内で働くということ。正社員で働くということ。専業主婦でいるということ。】専業主婦の妻に「正社員で働いてほしい」と伝えた

夫婦

「正社員で働いてくれない?」と言われた妻の心理と、令和夫婦の価値観のズレ


ある日、夫が切り出した一言

子どもが中学生になるタイミングで、専業主婦の私に夫が言いました。

「そろそろ正社員で働いてくれない?」

理由はシンプルです。

  • 家計が厳しい
  • 教育費が増える
  • 共働きにすれば安定する

理屈は理解できます。でも、心の奥がザワつきました。
それは怒りではなく、孤独感の裏返しでした。


「じゃあ私って必要なのかな?」

私はこれまで、育児と家事をフルでこなしてきました。
朝は6時に起きて朝食と弁当作り、夕方は習い事の送迎、土日は学校行事。
言葉にしない“労働時間”は、誰よりも長かったはずです。

そこに「正社員で350万円稼げ」と言われた瞬間、

「じゃあ、これまでの私は何だったの?」

という問いが胸を突き刺しました。

心理学的にいうと、これは存在価値の揺らぎです。
人は自分の役割が急に「別の誰かでも代替できるもの」に見なされると、強い虚無感を感じやすくなります(※自己決定理論より)。


妻が欲しいのは「助ける人」ではない

夫はこう付け加えました。

「家事も育児も、これまで以上に手伝うよ」

でも、それは“支援”であって、“共感”ではありません。

多くの女性は、

  • 行動の評価より「気持ちの理解」
  • 正しさより「温度の共有」

を重視する傾向があります(※ジョン・グレイ『ベスト・パートナーになるために』より)。

夫は「現実的な解決策」を提示しているつもりでも、妻には「私の気持ちはスルーされた」と響いてしまうのです。


夫の頭の中は「問題解決モード」

一方で夫の心理はこうです。

  • 家計を安定させる
  • 将来の不安を減らす
  • 家族を守るための合理的判断

これは責任感の現れでもあります。
しかし、感情の前提をすっ飛ばして「数字の正しさ」だけで会話を進めると、相手には冷淡な人に見えます。

行動科学ではこれを「認知ギャップ」と呼びます。
同じ出来事でも、受け取る側のフレーム(感情・価値観)が違えば、全く別の意味に変換されるのです。


すれ違いが起きる構造

心理学的には、夫婦喧嘩の多くは次の対立構造にあります。

夫(男性脳の傾向)妻(女性脳の傾向)
問題解決感情の共有
正しさ気持ちの理解
論理共感

脳科学でも、男性はストレス時に前頭前野(論理・計画)を使いやすく、女性は扁桃体(感情処理)が活性化しやすいことが分かっています。
つまり、「正しい解決策」と「心地よい会話」は、脳の回路レベルで噛み合わない瞬間があるのです。


すれ違いを減らす3つのヒント

  1. 感情を先に確認する
    「不安だよね」「大変だよね」と感情のラベル付けをしてから話す。
  2. 数字を一緒に見る
    感情を共有した後に、家計簿や将来の資金計画を並べる。
  3. 役割分担を合意で決める
    誰が何をどれくらいやるのか、口約束でなく可視化する。

令和夫婦を悩ませる「見えない不安」

昭和のように「夫が稼ぎ、妻が家庭」でもなく、平成の「とりあえず共働き」でもない。
令和の夫婦は、キャリアも家庭も同時に背負いながら、正解のない時代を生きています。

SNSを開けば、「年収1000万でも不安」「FIREして海外移住」など、非現実的なモデルが溢れています。
これが無意識に「自分たちは足りない」という感覚を強化し、夫婦間の会話にも影響を与えます。

心理学ではこれを「社会的比較理論」と呼びます。
他者との比較はモチベーションになる一方で、自己肯定感を下げる大きな要因にもなるのです。


令和夫婦の新しい問い

「妻が冷たい」と感じますか?
「夫が現実を見すぎ」と思いますか?

答えは一つではありません。
でも確かなのは、“正しさ”だけでは夫婦は動かないということです。
気持ちと現実の両輪がそろってこそ、夫婦の関係は続いていきます。

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