



【結婚するなら、この人…でも彼の顔が好きになれない】心理学で読み解く「好き」と「合う」の違い
性格は合う、価値観も似ている。それでも…
彼はとても優しい人だ。
性格も合うし、金銭感覚や仕事への向き合い方、食の好み、連絡の頻度まで、今まで出会ってきた中で一番「私と似ている」と感じる。
たぶん、結婚するならこの人なんだろうな。
一緒に生きていくなら、こういう“地に足のついた人”がいいのかもしれない。
でも——
彼から告白されたとき、どこか心に引っかかるものがあった。
「夜景見に行かない?」その瞬間に感じた違和感
ある日、彼と夕食デートをした。
ご飯はとてもおいしかったし、会話も心地よかった。
でも食後、彼が「このあと夜景見に行かない?」と誘ってきたとき、ほんの一瞬、「ちょっと嫌だな」と思ってしまった自分がいた。
断る理由もないし、「いいよ」と答えたけれど、夜景をバックに「寒くない?」と肩を寄せてくる彼を前に、私は心の中で静かに構えていた。
(……これ、完全にキスの流れだよね)
私は、さりげなく受け流した。
嫌いじゃない。むしろ、人としてはすごく好き。
でも、男性として見られていない自分に気づいてしまった。
顔が好きになれないという現実
彼の容姿がタイプではない。
髪型もちょっと野暮ったくて、服装もどこかダサい。
ファッションに興味がないらしく、服を買いに行こうと誘っても「僕のはいいよ」と断られる。
私はおしゃれにこだわる方じゃないけど、それでも「隣を歩きたい」と思える相手か?と自問してしまう。
たぶん、私は彼の“顔”をどうしても好きになれないのだ。
心理学でみる「好き」と「合う」の違い
心理学では、人間関係の愛情をいくつかのタイプに分類している。
米国心理学者エレイン・ハットフィールド(Elaine Hatfield)の理論によると、恋愛には大きく分けて「情熱的愛(Passionate Love)」と「友愛的愛(Companionate Love)」の二種類がある。
- 情熱的愛:ドキドキや性的魅力を伴う強い恋愛感情。見た目や雰囲気に惹かれることが多い。
- 友愛的愛:信頼・尊敬・安心感が中心。長期的な関係維持に強い。
私が彼に抱いているのは、明らかに「友愛的愛」に近い。
価値観や生活のペースが合って、安心できる。でも、情熱的愛の要素——特に外見への魅力——が欠けている。
「外見的魅力」の心理学的役割
1974年、心理学者ドナルド・ダットンとアーサー・アロン(Dutton & Aron)は、有名な「吊り橋実験」を行った。
被験者の男性は高い吊り橋の上で女性に声をかけられると、地上で声をかけられた場合よりも連絡してくる確率が高かった。
これは「ドキドキ」を感じる状況が、相手への魅力と誤認されることを示す実験だ。
つまり、恋愛感情には外見的魅力や身体的反応が少なからず関与している。
安心感だけでは、恋愛の“ときめき”を補完しにくい。
生理的嫌悪感は変えられるのか?
心理学では、生理的な魅力や嫌悪は「初期印象形成(First Impression)」の段階で強く固定化されるとされる。
これはハロルド・ケリーの「印象形成理論」でも指摘されている。
初対面の印象は数秒で作られ、その後の情報もその印象を補強する形で処理される。
外見への嫌悪感は、理屈で変えられにくい。
しかし、外見そのものよりも「清潔感」「表情」「身だしなみ」といった可変要素にアプローチすれば、認知が変わる可能性はある。
「いい人だから結婚」は幸福度を保証しない
ハーバード大学の成人発達研究(The Harvard Study of Adult Development)によると、長期的な幸福度を左右するのは「関係の質」だ。
ここでいう“質”は、価値観や性格の一致だけでなく、「お互いを異性としてどう感じるか」も含まれる。
外見がタイプでなくても幸せな夫婦はいる。
ただし、その場合は他の要素(ユーモア、スキンシップの心地よさなど)が魅力を補っているケースが多い。
私の葛藤:「安心」と「情熱」の間で
私は今、「安心感」という強い土台を持つ人と、「情熱的な恋愛感情」を抱けない現実の間で揺れている。
結婚後は恋愛感情が薄れると言われる。
しかし、最初から情熱がない場合、その関係はどうなるのだろう?
心理学者ジョン・ゴットマン(John Gottman)は、離婚を予測する要因として「軽蔑(Contempt)」を挙げている。
軽蔑は、相手を見下す感情であり、外見的魅力の欠如が長期的にこれを引き起こす可能性もある。
決断の基準は「自分の心に誠実であること」
周りから見れば、きっと彼は「理想の結婚相手」だろう。
でも、結婚は他人の評価ではなく、自分の感覚で選ぶべきもの。
心理学的にも、「選択の自己決定感(Sense of Autonomy)」は幸福感に直結する。
“いい人だから”という他律的な理由で結婚すると、後悔や抑うつのリスクが高まることが分かっている。
まとめ:「いい人」と「好きな人」は違っていい
- 「好き」と「合う」は心理学的にも異なる要素
- 外見的魅力は恋愛初期の感情形成に影響大
- 安心感だけでは長期的な情熱を維持しにくい
- 自分の気持ちに誠実でいることは、相手を大切にすることにもつながる
結婚は、誰かにすすめられてするものじゃない。
顔がタイプじゃない——それは自己中心的な悩みではない。
自分の感覚を信じることは、未来の自分と相手、双方を守る選択でもある。


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