



【祝いたくない先輩】理不尽な人に「おめでとう」は言えないと思った日
■ 「普通に考えたらわかるでしょ?」の衝撃
「これってこのやり方で合ってますよね?」
4つ年上の先輩にそう確認したとき、返ってきた言葉は冷たかった。
「普通に考えたらわかるでしょ? 自分勝手なやり方でやらないように」
いや、だからそれを確認してるんですけど…
心の中でそうつぶやきながらも、私は飲み込んだ。
この先輩はいつも一言多く、しかもどこか見下すような口調だった。
こちらが気を使っても、それが返ってくることはなかった。
■ 私がミスしたことになっていた
ある日、先輩が大騒ぎを始めた。
「え?なんで?データが消えてる!」
私は、少し前に見たときには確かに存在していたので、
「この前見たときはちゃんとありましたよ」と事実を伝えた。
するとまさかの展開——上司に「私が消した」と報告されていたのだ。
その上、こう言われた。
「新しく作って明日までにメールで送っといてよ」
「ほんと、仕事任せるの嫌になるわ」
頭の中が真っ白になり、怒りと悔しさと情けなさが一気に押し寄せた。
■ 妊娠発表と、湧かなかった「おめでとう」
そんな先輩が妊娠していることがわかった。
「あと数ヶ月で育休だわ〜」と笑顔で話す姿を見ても、私はまったく喜べなかった。
別の同僚が「出産祝いしないとね!」と言った瞬間、胸の奥がつんと痛んだ。
——なんで、あの人に“お祝い”をしなきゃいけないの?
理不尽な態度、押し付けられた責任。
その記憶が鮮明に残っている相手に、笑顔で「おめでとう」とは言えなかった。
🧠 心理学的に見る「祝いたくない」感情
「祝う」という行為は、単なる儀礼ではなく信頼関係の上に成り立つ感情行動です。
心理学者チャールズ・ダーウィンは『人および動物の感情表現』(1872)で、人間の感情表現は生物学的適応の一部であり、誠実さや信頼を示すシグナルだと述べています。
1. 信頼残高と「お祝い」
米国心理学者ジョン・ゴットマンは、夫婦関係の研究で**「信頼残高」**という概念を提唱しました。
これは、日々のやり取りの中で積み重ねられる「信頼の貯金」です。
ポジティブな行動が多ければ残高は増え、ネガティブな行動が続けば残高は減っていきます。
あなたが先輩を祝えないのは、この信頼残高がマイナスになっているからです。
お祝いとは、残高がプラスの相手に自然と湧く感情であり、残高がマイナスの相手に無理やり行うと、感情的不協和が生じます。
2. 感情的不協和(フェスティンガー, 1957)
レオン・フェスティンガーの認知的不協和理論によれば、人は自分の感情と行動が食い違うと強いストレスを感じます。
「嫌いな相手を祝う」という行動は、感情と真逆の行為。
この不一致が、あなたの胸を締めつける不快感の正体です。
無理に「おめでとう」と言うことは、心理的ストレスを蓄積させる可能性があります。
3. 道徳的感情と自己防衛
社会心理学者ジョナサン・ハイトは、道徳的感情(Moral Emotions)という概念で、人間の感情は他者との社会的関係を維持・調整する役割を持つと説明しています。
「祝いたくない」という感情は、自己の尊厳や境界線を守るための防衛的な感情とも言えます。
これは心が狭いのではなく、自分を守るための健全な反応です。
🎯 どう向き合うべきか?
- 感情を否定しない
「祝いたくない」という感情を持つ自分を責めないこと。これは自然な心理反応です。 - 儀礼と感情を分ける
職場の人間関係では、形式上の対応をする場面もあります。
その場合、心を押し殺して「演じる」のではなく、必要最小限の儀礼にとどめましょう。 - 距離を保つ
感情をすり減らす関係は、物理的・心理的距離を取ることが有効です。
これも自己防衛の一種です。
まとめ:「祝う」も「祝わない」も、自分で選べる
「おめでとう」を言うのも、「ありがとう」を言うのも、心がこもっているから意味がある。
信頼関係が崩れている相手に、無理して祝う必要はありません。
人間関係において、感情は正直なコンパスです。
自分の感情を無視することは、自分自身を傷つけることにつながります。
祝いたくないと感じたとき、それは心があなたに「距離を取っていい」と教えてくれているサインです。
💬 あとがき
職場は、割り切りが求められる場所です。
でも、人間は感情を切り離して生きられる存在ではありません。
だからこそ、無理に笑う必要はありません。
あなたの信頼を裏切らない人だけを、大切にすればいいのです。



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