▶️ ストーリー概要
「一緒にお風呂入ってますよ~?」
職場の休憩室で、新婚さんの甘いエピソードが飛び交う。
私は聞きながら、思わず微笑んだ。
ああ、私にもそんな時期があったな。
結婚して33年。
今の夫とは…仲がいいとは、正直言えない。
💬 あの頃、助けてほしかった
私が子育てでいっぱいいっぱいだったころ、夫はまるで他人事のようだった。
- 夜泣きしても起きず、知らん顔
- 熱を出した子どもを抱えて病院へ行くのも私
- 運動会や授業参観も、仕事を理由にほとんど来なかった
私?産休はほとんど取れず、生後半年で職場復帰。
「母親だって働くのが当然でしょ」と社会からも押しつけられるような空気があった。
本当は、助けてほしかった。
ただ「ひとりじゃない」と感じたかった。
☕ 今さら何を
そんな夫が、定年退職してから急に優しくなった。
朝、気まぐれにコーヒーを淹れてくれるようになったり。
「今日は洗濯物、干しておいたぞ」なんてことを言ったり。
「ヒマなんでしょ?」と笑って流すけれど、
心のどこかでチクリとする。
なんで今さら?
あの頃は見向きもしなかったくせに。
子どもが大きくなったから、今さら“父親やってます”みたいな顔されても。
そんな風に思ってしまう自分にも、正直ちょっと嫌気がさす。
🧠 心理解説:これは「和解」か、それとも「償い」か
▶️ 時代がつくった“すれ違い”
ある男性同僚がこんなことを言った。
「あの時代の男って、“家族のために働く”ことがすべてだったんじゃないかな」
確かにそうかもしれない。
でも私たち女性は、“育児と家事をこなしながらも働く”のが当然とされていた。
- 「母親なんだから当然」
- 「男は仕事で精一杯なんだ」
そんな価値観の中で、お互いが余裕を失い、気持ちを置き去りにしてきた。
でも、だからこそ言いたい。
「助けてって、言わせてほしかった」
「ありがとうって、言ってほしかった」
心がちぎれるほどつらかった時期を、見て見ぬふりされた記憶は、
年月が経っても簡単には癒えない。
▶️ なぜ今、優しくするのか?
最近の夫の行動を見ると、ふと疑問がよぎる。
- 老後が不安になったのか?
- 孤立を恐れているのか?
- 私や子どもに見捨てられたくないのか?
- それとも、あの頃の「埋め合わせ」のつもり?
優しさの理由はわからない。
本人に聞いても、きっとうまく答えられないだろう。
でも、たった一つだけ言えるのは——
あの頃の傷は、そんな簡単に埋まらない。
👵👴「仲がいい」だけが夫婦じゃない
今はお互い、干渉せずに好きなことをして生きている。
会話は減ったけど、無理に争うこともない。
子どもたちは独立して、今は孫の話でときどき一緒に笑える。
仲がいいわけじゃない。
でも「終わっている」わけでもない。
“夫婦の形”って、こういうのもあるのかもしれない。
💡 まとめ:伝えられなかった気持ちは、ずっと残る
“今さら優しくされても”と思う気持ちは、
その奥にあるのは、「本当はあのとき、支えてほしかった」という強い感情だ。
夫も、変わりたいと思っているのかもしれない。
でも、妻の心はまだそこまで追いつけていない。
結婚生活は長くなるほど、
「言えなかったこと」が増え、心の距離になっていく。
どちらが悪いとかではなく、
「伝えられなかった」という事実が、傷になって残るだけ。
🪄 最後に
人は変われる。
でも「変わる時期」には限りがある。
本当に必要なときに寄り添ってもらえなかった記憶は、
どれだけ今優しくされても、なかなか塗り替えられない。
それでも、心の奥にある願いはいつも同じ。
「あなたと、ちゃんと向き合いたかった」
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